高齢者の口腔ケア3

転ばぬ先の、入れ歯。

噛むことで、脳の血流量が増え、脳の中枢の運動野が活性化されることはお話ししました、義歯をつくることで、噛む能力を回復させ、健康がカムバックした症例は数多く見られます。有名なのは、上野動物園の人気者だったロバの一文字号。老衰でエサを食べなくなり、痩せおとろえた一文字号に、義歯を製作し、はめてみたところ、すぐに草を食べ始め、みるみる元気になったそうです。人間の場合でも、義歯を入れることで、それまで歩けなかった高齢者がわずかな期間で歩行できるようになったという例が数多く見られます。逆に言うと、歩くことができない齢者の口の中をのぞいて、噛む能力が悪化していないかを調べることも重要です。

上の図は、厚労省の研究班が愛知県在住者1763人を3年間追跡調査したものです。その結果、歯がほとんどなく、義歯を使っていない人は、歯が20本以上ある人に比べて、転倒リスクが2.5倍高くなっています。また、歯がなくても義歯を使用している人は1.36倍で、転倒リスクはかなり低くなっています。義歯を使用していないと、下あごが不安定になり、カラダのバランスが崩れることも要因の一つとして考えられます。